赤穂屋本館

煌めき

 入園ゲートをくぐると、華やかな音楽が二人を包んだ。視界の向こうには大きなお城が立っていて、まるで別の国に旅行に来たかのようだ。目の前の広場では、噴水の前で着ぐるみ達が入園客の子供達をもてなしている。

「わぁ〜!!」
 二人は今日、遊園地に来ていた。

 実は以前、ここにもタキオンとデジタルと彼女のトレーナーの三人で訪れたことがあるのだが、折角なら二人だけでも行こうということで、少し前にタキオンから誘ってくれたのだ。大好きな人と一緒に遊園地に来て、しかもそれが彼女の方から誘われただなんて奇跡に近いだろう。嬉しくないはずがなかった。

 すぐそばにポップコーンの屋台があるようで、甘いキャラメルの香りが微かに漂ってくる。一歩足を踏み入れるとパークはとても広くて、夢も広がっていくかのような気持ちだ。遠くの空にはジェットコースターの線路の曲線が見えて、ワクワクがとにかく止まらなかった。

 デジタルは興奮した様子でタキオンに尋ねる。
「た、タキオンさん!! どこから行きますかっ!?」
「そうだねぇ……」
 声を弾ませるデジタルとは対照的に、タキオンはいつもの落ち着いた様子でパーク内を見渡す。

「アレに乗ってみたいねぇ」
 そう言って彼女が指差した先には、このテーマパークの中でも一際大きなジェットコースターだった。言っている間にも、超スピードで宙を走る赤い乗り物からはキャーという楽し気な悲鳴が聞こえてくる。

「ひぇっ!? いきなりアレですかぁ……!?」
「ああ。ダメかな?」
「いえ、ダメじゃないですッ!!」
 デジタルは即答して、目を輝かせた。

 ——ああっ……デジたん今すっごく幸せかも……!

 遊園地にタキオンと来られるだなんて、まさに夢のようだ。しかも隣に立つ彼女は、なんとあの日二人で一緒に買った洋服を着てくれている。これを幸せと言わずして何と表現すればよいのか。今日の出来事は全てを記憶する心持ちでいこう、とデジタルは決意してタキオンの後ろを歩き始めた。

 ジェットコースターのエリアには既に長い列が伸びていて、若者達がお菓子を食べたり携帯を触りながら退屈を潰していた。ゲートの上には八〇分待ちの文字が浮かんでいる。
 二人も順番を待つ列に加わって、前が進むのを待つ。

 隣にいるタキオンはあまりテーマパークに来たことがないようで、列で待っている他の客や周りの景色を観察するように瞳をあちらこちらに動かしている。
 デジタルはそんな彼女に釘付けになっていた。

(はぁあ……タキオンさんの物珍しそうに周りを観察するお顔もしゅてき……!)
 それまで建物や他の客を見ていたタキオンがやがてデジタルの方に視線を向けると、すぐ隣で自分に熱視線をくれていたデジタルの手に指を絡ませた。

「うひゃっ!?」
「デジタル君。君は本当に私のことが好きなようだね?」
 そう言うとタキオンはデジタルの瞳に視線を注ぎながら指をぎゅっ、ぎゅっと握ってくる。その度にデジタルの心臓はばくん、ばくん、と高鳴った。デジタルの指は為す術なくタキオンに歪められる。

「はっ……はい……すき、ですぅ……」
 デジタルは耳をぺしゃりと曲げて降伏した。
「ほう? そんなに素直に認めるなんて、君にしては珍しいねぇ。」
 愉しそうな表情のタキオンに指摘されて、ハッと気づく。

 タキオンが好き、という想いを本人に肯定してもらったあの夜から、デジタルはその気持ちを自分で少しずつ認めることができるようになっていたのだ。
 ——タキオンさんが、あたしのことを大切な人と言ってくれたから……、あたしはきっと一人じゃないから、大丈夫。
 今、こうやって本人を目の前にして素直に好きだと言えるようになったのも、あの夜に彼女から想いを認めてもらったからだった。

「さぁ、デジタル君。もう順番が来たようだよ」
 タキオンの言葉に驚いて顔を上げると本当にジェットコースターの順番が次まで迫っており、他の乗客はもうマシンに乗り込んでいた。デジタルは急いで荷物を預けて座席に乗り込む。
 黒い安全バーが上から降りてきて、胸と腕がぎっちり留められてしまった。足だけが頼りなげに浮かんでいる。
 また逃げられない、でも今回は大丈夫。

(タキオンさん、また落ちるときちっちゃく「ふぁっ……」って言ってたぁ……!!)
 ジェットコースターから降りてきたデジタルは階段を下りながら胸を押さえて余韻に浸っている。一方タキオンは何事もなかったかのように平然としていた。

「いやぁ、ジェットコースターに乗るのはこれで二回目だけれど、おもしろいねぇ。乗っているのはせいぜい数分間だけだと思うのだけれど、ここまで短時間で心身に高い負荷を掛けられるのは興味深い」
 タキオンはそれまであまり馴染みのなかったジェットコースターに乗ったからか、乗る前よりも興奮しているようだった。まだまだ広がるパークの景色を見渡したあと、デジタルの腕を掴んで言った。

「さぁデジタル君、この調子で園内を周っていこうか」
「はっ、はいっ!」
 デジタルの返答を聞くと、タキオンはそのままデジタルの腕を引いて石畳を歩き出した。
 それから二人はパーク内のアトラクションを順番に周っていった。タキオンは家族と遊園地に来たことがなかったし、デジタルも、生まれ育ったところには大きな遊園地がなかったので二人とも新鮮に楽しんでいた。

 ★

 デジタルがタキオンと手を繋いでパーク内を歩いていると、キャラもののメンコが売られていることに気付いた。
 華やかな装飾が施されたワゴンにはピンク、黄色、青といった色とりどりのメンコが飾られていて、中にはスパンコールの輝きを放つものもあった。

「タキオンさん! あれ、メンコじゃないですか?」
「おや? 本当だね」

 普段、店でヒト用やヒトウマ兼用のアクセサリーが売られているのはよく目にするが、ウマ娘しか着けられないメンコがこうして表に沢山並んでいるのは珍しい。

 二人が近付いてよく見てみると、そのメンコの中にはワイヤーが通っていて、ウマ娘でもネコやウサギのような耳に変身できるようだった。

 人間がキャラもののカチューシャをつけている様子や写真はよく目にしていたものの、ウマ娘はその耳の位置の都合上キャラもののカチューシャは着けられない。それ故デジタルは、パーク内でカチューシャを付けている人達を見て少し寂しく感じていたのだ。

 並んだメンコの側に貼られている、キャラメンコを着けた子供のウマ娘の写真がまた可愛らしくて心をくすぐられる。

 ……もし、タキオンさんがこれを着けたら……、そんなことを考え始めるとたちまち色んな妄想がデジタルの頭の中を満たした。

「買ってみるかい?」
「ふぁ!?」
 タキオンの声が突然耳元で聞こえて、心を見透かされたような感覚に陥り若干パニックになった。タキオンはワゴンに整列させられたメンコの方をちらっと見遣って言う。

「欲しいんだろう?」
「えっ、あの……えっと……」
 まさか自分が着けているところではなくタキオンが着けているところを想像していたとは言い難く、言葉を淀ませる。

「じゃあ一つ、私からのプレゼントということで」
「ひぇっ!? そっ、そんな悪いですよぉ……! それにこれ結構高いですし……!」
 タキオンの突然の提案に、デジタルは遠慮して首と手をぶんぶんと横に振る。

 売られていたメンコは、手が届かないこともないけどちょっとお高め……という値段設定だった。観光地によくある、いわゆるお土産価格だ。

「遠慮することはない。折角君とここまで来たし、記念さ」
「い、いいんですか……?」
「あぁ。どれにするんだい?」

 成り行きで自分用のメンコを見ていたことにされてしまったデジタルは、メンコを一つずつ見ていく。とはいえ、こういう可愛いものは好きなので見てるうちに気に入ったものは見つかりそうだ。ネズミ、ネコ、ウサギ、イヌ……様々なメンコが買ってほしそうにこちらを見つめている。

 デジタルはしばし考えたのち、ウサ耳のメンコを手に取った。可愛らしいパステルイエローで、耳の穴には可愛らしい水玉模様がデザインされている。それと、どうやらワイヤーが針金になっていて、軽く押してやれば好きな位置で耳を曲げられるようだ。

「あ、あたしはこれで……」
「ほう……いいねぇ。じゃあ、私はこれを」
 と言って、タキオンは愛くるしいネコ耳のメンコを手に取った。

「ええっ!? タキオンさんも買うんですか!?」
「ン? 当たり前じゃないか。こういうものはお揃いで買わないと意味がないんじゃないのかい?」
 彼女の手に握られたメンコは髪色と同じ栗色で、冬には重宝しそうなフワフワもこもこ……そう、冬毛のネコちゃんだった。

「そ、そうですけどぉ……」
 正直、驚きだった。タキオンはこういう飾り物には興味ないと思っていたからだ。

「じゃあ、買って来よう」
 デジタルが戸惑っている間に、タキオンは二人が選んだメンコを持ってスタッフと会計を始めていた。

(タキオンさんがあのネコ耳のメンコを着けたら、あたしどうにかなっちゃうかも……)

 ただでさえ素敵すぎる彼女の耳がこれ以上可愛くなるなんて……想像しただけで尊死しそうだった。

「お待たせ」
 そんなことを考えているうちに、タキオンが会計を済ませてデジタルのもとに戻ってきた。彼女の手には、先ほどのメンコがもうタグが切られた状態で握られている。

「わぁ……! ありがとうございますぅ……!!」
「フフ。ほら、君に着けてあげよう」
「はっ、はいぃ……」
 デジタルは言われるがままに、耳にメンコを着けてもらう。タキオンの指が自分の耳を触ってくれる感触が心地いい。
 デジタルは普段メンコは着けないが、それでも一般的に売られているメンコとほぼ着け心地は一緒なのが分かった。触覚も聴覚もほぼ問題なしだ。

「……」
「ど、どうですかぁ……」
「ふむ……」
 タキオンはデジタルの頭と体を交互に見比べる。タキオンの視線が何度も行き来するのが何だかくすぐったくて恥ずかしい。

「なるほど。確かにこれは可愛らしい」
「ヒュッ……!」
 タキオンに可愛らしいと言われた瞬間、デジタルは胸を撃ち抜かれたように心臓が跳ね上がった。やっぱり、こうしてはっきり褒められるのはなかなか慣れない。

「はわわわ……あばばば……」
「さて、では私も」
 そう言ってタキオンもネコ耳のメンコを着け始めた。左耳、右耳と順に装着していくとみるみる内にタキオンがウマ娘からネコ娘に変身していく。

「さて、どうかな?」
 ネコ耳を装着したタキオンが、ぴこぴこと耳を動かしてみせる。いつもの丸っこいタキオンの耳が三角のネコ耳になって、愛らしく動いた。


illust:湯吉さん


 ……これを自分は無料で見ていいのだろうか?

 ちょっと破壊力がありすぎる。いいのか? タキオン一人のこの尊みパワーでもう地球なんていくらでも救えるんじゃないか? 自分でも何を言っているのか分からないけど、語彙力がやられてしまうほど尊いということだ。

「ハァッ………………最高、です………………」
「それはよかった」
 文字通り言葉を失っているデジタルを見て、タキオンはまた耳を動かしてみせた。その尊さに当てられ、デジタルは思わず腕でその輝きを遮った。

「フフ、おもしろいねぇ。まさに夢の国といったところだ」
「で、ですねぇ……」
 目の前にいるタキオンがもう尊すぎて、デジタルは半分うわの空で返事をする。

「さ、次はどこに行こうか」
「ハッ……じゃ、じゃあ、あそこに……!!」
 デジタルが近くのアトラクションを指差すと、タキオンはデジタルの手を引いて歩きだした。

 これから半日、自分の心臓はもってくれるだろうか——。ネコ娘となったタキオンの後ろ頭を見ながら、デジタルは彼女の後について行った。
 それからも二人は、様々なアトラクションを満喫していった。

 ★

 もう陽も沈みかけ、夕陽に導かれるように人々が帰る方向に流れてゆく。

 こちらのライドは次で最終運行になります——。園内のアトラクションが徐々に最終運行をアナウンスし始めたのもその頃だった。そんな放送を聞きながら二人もなんとなく人の波に流されてゆく。

「いやぁ~、今日はいっぱい楽しみましたねぇ……!」
「そうだねぇ……」
 今日はたくさん楽しんだはずなのに、なんだかまだ帰りたくない気分だった。

 なんとなくガスの抜けた人々の笑い声と、最終運行と、夕陽。二人が寂しさを共有するのには十分だった。

 ——まだ、帰りたくない。少しだけでいい、このデートを延命させてくれる何かが欲しかった。そう思って人の波の向こうを見ると、西陽を受けてチラチラと光をはね返す観覧車があった。これも最終運行が近いようで、スタッフのアナウンスの声が聞こえる。
 デジタルは勇気を振り絞って言った。

「あ、あのぉ、最後にアレに乗りませんか?」
 タキオンはデジタルの指の先を見ると、すぐに微笑んで返した。
「いいねぇ。アレで最後にしようか」
「は……! はい!」

 二人は人の波に逆らって、観覧車の列に向かう。はぐれないように、二人の指先はしっかりと繋がったままだ。
 楽しかったこのデートも、これで終わってしまうのか——。そう思うと胸のあたりがきゅうっと締めつけられる。デジタルは彼女に分からないようにほんの少しだけ強く、タキオンの手を握った。

 観覧車を待っていた数人の後ろに並ぶと、二人の順番はすぐにやってきた。最後だからかほとんど脱力しかけているスタッフの誘導に従ってゴンドラに乗った。
 赤くて小さな部屋が二人を迎える。席はちょうど向かい合わせの形だ。
 スタッフが扉を少し乱雑に閉めると、ぎぎぎと音を震わせながら視界がゆっくりと浮いていった。

「あたし、観覧車に乗ったの久しぶりです……! もしかしたら、日本に来てからは初めてかも……」
 デジタルはそう言ってゴンドラの窓から遠ざかる地面を見つめる。

「おや、そうかい? こっちにはいつ頃来たんだったかな」
「本当に小さい時ですねぇ……だから、英語も少ししか話せなくて」
「そうなんだねぇ」

 地上にいる人達が、どんどん小さくなってゆく。少しずつ普段の世界からは離れていくかのようだ。赤くて小さな部屋は、たちまち二十分限りの二人だけの国になった。

「……なぁ、デジタル君」
 目の前のタキオンに呼びかけられ、視線を彼女の方に戻す。

「君は、今日一日私と過ごして、どんな気持ちだったかな」
「ふぇっ?」

 突然の自由記述にどう答えればいいのか分からず、デジタルは頭の中で言葉を書いては消し、書いては消しを繰り返した。でも、どれだけ考えても机の上には消しカスだけがどんどん溜まるだけだった。目の前に座るタキオンの瞳に急かされ、観念して口を開く。

「えっと……タキオンさんに遊園地に誘ってもらえて、こうやって二人でいっぱい周って、すごく、楽しかった、です……」
 結局、まるで小学生の作文かのような感想しか絞り出せなかった自分が恥ずかしくて、デジタルはまた遠い地面に視線を戻してしまった。観覧車に乗っている間にも陽が沈みつつあるようで、外はかなり暗くなってきている。

「……そうか」
 彼女の声が聞こえた瞬間、ゴンドラが微かに揺れた。

 違和感に気づいて振り返ると、タキオンが自分のすぐ隣に居場所を移していた。

「デジタル君。私も同じ気持ちだよ」

 彼女の息遣いが伝わる。普段は涼し気なタキオンの瞳が、仄かな闇の中でほんの少しだけ揺れていた。

「私もね、とても楽しい時間を過ごしたよ。君と一緒にいるのはとても嬉しくて、ずっと一緒にいたいと思えるような、そんなひと時だった」

 タキオンの気持ちを聞いて、デジタルの胸の奥が揺れる。目の前のタキオンの言葉を聞くのが精一杯で、頷くことができない。しかし、もはや二人に言葉は必要なかった。

「デジタル君。もし、君さえ良ければ……」
 タキオンの顔が、徐々に近づいてくる。

 彼女の表情は真剣そのもので、まるでレース中の彼女と対峙しているかのようだ。自分の中の感情と必死に戦っているかのような——そんな表情だった。

 いつにない彼女の余裕の無さそうな表情に思わず目を奪われていると、自分の手にじっとりとしたものが重なった。彼女の指だ。
 こんな状況、いつもなら想像するだけで心臓の鼓動が速くなるだろう。しかしその瞬間——デジタルは、不思議と緊張しなかった。ゆっくりと彼女と指を絡めて、手を握り返す。タキオンの口元が、少しだけ和らいだ。

「愛しているよ」
 その瞬間、唇に柔らかい感触が伝わった。

 二人の乗ったゴンドラが頂上に差し掛かったころ、ようやく陽が完全に沈み夜の帳が訪れた。月の明かりと遊園地のイルミネーションだけが二人を柔らかく照らした。

 

「さぁ、デジタル君降りるよ」
「はいぃ……」
 結局あの後、タキオンと初めてキスできたことに感極まりすぎて、情けないことにまた彼女の前で泣いてしまったのだ。
 スタッフに促されて、動いているゴンドラから床の印に合わせて足を踏み出す。お疲れ様でしたーというスタッフの伸びた挨拶に軽く会釈を返すと、後ろでスタッフの掛け声とともに大きく軋むような金属音が鳴った。どうやら自分達で本当に最後だったらしい。

 観覧車の辺りを抜けると、外はもう真っ暗だった。パークのほとんどのアトラクションが終了して、辺りには自分達とまばらに移動するスタッフくらいしかいなかった。
 きっと自分の顔は涙でボロボロだけど、外が暗くて助かった、とデジタルは俯きながら考えていた。

「……デジタル君」
「ひゃ、ひゃいっ」
 それまで無言で歩いていたので、声が裏返ってしまった。

「さっきのことだけど。……嫌じゃなかったかな」
 その時聞こえてきたタキオンの声色が今までに聞いたことないくらい自信のなさそうもので、デジタルは思わず顔を上げた。タキオンは、自分の肩の上で同じように俯いていて表情がよく見えない。

「……嫌じゃ、なかった、です」
 言葉を返した自分にも余裕がなくて、途切れ途切れで返事をしてしまった。これでは言葉が足りないことに気付き、慌てて付け足す。

「……嬉しかったです、とっても」
「……そうか」
 そう言ったタキオンの声色が少しだけ明るくなったのが分かって、デジタルはそっと彼女の手を握った。

「また、来ましょう」
 手を握られて一瞬驚いたように体を強張らせたタキオンだったが、すぐに緩ませて答えた。

「ああ。また来よう」
 指を絡ませて手を握り直す。少し冷たい夜風の中、二人はお互いの気持ちを通い合わせるようにして夜の闇へと紛れていった。


表紙・挿絵イラスト:湯吉さん